第4回 国際食虫植物会議 日本大会


6月21日(金)の講演発表内容及び様子



6月21日初日、会社を休んで朝6時に自宅を出発、大久保駅に降りたのが7時30分。目の前にある立ち食いソバで天玉ソバに稲荷寿司を平らげ、会議場へ向かう。途中、新潟の高橋さんと会う。浜田山の常連でもあるとてもアクティブな方である。 会場に到着すると、すでに杉浦さんがお出迎え。最近は浜田山でお会いしていないので、とても久しぶりである。中に入るといきなりの展示品の数々に驚いた。広島市植物園、兵庫フラワーセンター、水戸市植物公園などの展示品が所狭しと並べられており、その質の高さは海外の研究者も驚く事であろう。早速ビデオを回していると、宮本氏が既にアフリカの自生地写真集を片手に外人さんとお話をしているではないか。どうも上手く通じないようで、私を見つけるや否や、通訳を頼まれる。まあ何とかゼスチャーも交えて伝わったようである。そして一番驚いたのは兵庫の土居さんが居た事である。2年ぶりであろうか? とてもお元気そうであるが、会議には参加しないで、この後すぐに兵庫に車で帰られるそうである。残念であるが、積もる話で一気に盛り上がった。

また、しばらくすると京都の山本卓哉さんが登場。いつもFAXなどでのやり取りしているが、実際お会いするのは3年前の研究会の新年会以来である。山本さんは大きなNepenthes栽培温室を有しており、国内でも数少ない本格的な栽培家である。また彼の作出した交配種(N.otokuni=truncata x ventricosa)は近年稀に見る優良交配種である。

入り口は地下1Fであり、階を1つ上がった1回も展示場、ここにはまるで私を出迎えるかのように小宮先生が立っていた。何のためらいもなく近寄り久しぶりのご挨拶。小宮先生は食虫植物研究会の会長であり、日本歯科大学の教授を今年の4月に退職されたが、食虫植物の研究には手を抜いていないとか、、3年ぶりにお会いしたが、お元気そうで何よりである。食虫植物研究会とJCPSは、浜田山集会や情報誌作成、分譲行為などをめぐり、対立関係のような構図になっている感は否めないが、そんな感情的な対立など微塵も感じなかった。その後、柴田先生、田中さん、橋本さん、倉田さんにもお会いし、話もしたが、お互いの行き違いや誤解が生んだのも要因のひとつであるという認識で、私も今までの行為で詫びるところは頭を下げた。これからは狭い食虫植物の世界でお互い協力して盛り上げていきたいと話し合った次第である。

さらには、食虫界の長老、日下部先生もお見えになっていた。ご高齢にもかかわらず、お元気そうで何よりである。

さらに会うのははじめてである佐直氏とご対面である。はるばる北海道からの参加である。彼とはメールでやり取りする以前からの古い付き合いであり、いずれ北海道で自生地見学会でも開きたいと会話も弾んだのであった。 ここ1階にある展示品は研究会出品のものがずらりと並んでおり、一面に咲き誇るビブリスやウトリのリビダ、ディオネア、セファロタスなどが所狭しと並んでおり、その質の高さはさすがである。この会議に並行する形でJCPSでは伊勢丹で展示会を行なっているが、その質と量ではかなわないと実感した次第である。

さらに階を1つ上がるとそこは即売場であった。一番奥に食虫植物研究会の売店があり、橋本さんが即売品の準備をしていたので、なんの躊躇いもなくお手伝い。大きな袋をつけたセファロタスや満開のリビダ、3cm以上はあろうか? 大きな捕虫葉のハエトリソウ、フロートを着け開花しているウトリのラジアータや後1日で開花しそうなウトリのロンギフォリア、満開のムシトリスミレ、ドロソフィルム、八丈島のオリジナリサラセニアなどそちらの品揃えも見事なものである。同時期開催の伊勢丹即売品とはラインナップが異なり、両方顔を出す人も多いことであろう。本日は平日であるが、明日の土日は一般客の来場も期待できるであろう。

研究会のブースの目の前は、チェンリーのMalaysiana Tropicalsの売店である。大量のネペンテスが机3つ分の上に所狭しと並べられ、おききれない苗は、後のダンボールにたくさん入っている。聞く所によると700株以上は持ち込んだようである。その量にも驚くが価格も驚きだ。一例を挙げるとアリストロキオイデス3、000円、ローウイー2,000円など通常の輸出価格の半値以下である。開店準備中にもかかわらずネペンテスマニアが買い付けをしていた。同一種類を10株以上は持ってきているので、早々品切れはないであろう。ましてや浜田山のようにジャンケンになることもないであろう。早いもの順なのである。チェンリーと先日の浜田山集会での講演の御礼をしながら、歓談したのであった。さらにそのはす向かいにはスリランカの業者、Borneo Exoticaが見事なディスプレイをして即売の準備をしていた。園主のRobert氏とは付き合いは長くはないが、取引金額ではおそらく日本で一番取引をしているかもしれない。初対面であるが、非常に明るい人で、すぐに打ち解けた。また会議終了後の売れ残ったネペンテスの引取りの約束もその場でしてしまった。他の業者もそうであるが、売れ残った植物を再び本国へ持ち帰ることはCITESや検疫の問題で無理(時間をかければ不可能ではないが。。)なので、全て売り切るか、売れ残りを誰かがまとめて買い取るしか方法がないのである。

ここの業者の価格も破格であり、珍しい高山性の物が多く、マニアにはたまらない品揃えであろう。 さらに一番の国はドイツのAndrew Wistubaが準備をしていた。彼はネペンテスのほかにヘリアンフォラの品揃えが見逃せない。新種のH.folliculataもラインナップされていたのには驚きだ。また、成葉付きのH.minorが1,100円と破格。私と橋本さんでガツガツ買いあさってしまった。ほかにもN.Clipeataもすぐに売切れの気配である。

書籍の販売専門であったオーストラリアのTriffid Parkもレア物の書籍や最新の書籍までのラインナップは見事である。アレンローリーのNO1.2、近藤さんの原色食虫植物、昨年発行したムシトリスミレの書籍もあった。また笑えたのが、稲穂さんの「ムシトリスミレの世界へようこそ」もあったが、価格表示が1桁違っており、70,000円になっていたのには驚いた。早速訂正をしたが、それでも7,000円かあ、、

その上の3階はポスター発表の会場であり、様々な研究発表がポスター展示されている。柴田さんのU,machrorhizaの自生地紹介や宮本さんの南アフリカ探検の写真も多く展示されていた。

時間はそろそろ開始期の8時半、会場へ入り、当日の資料を頂き、目を通す。全て英語のものはパラパラとめくるだけであるが、日本語版はじっくりと拝見。密度の濃い3日間のプログラムがいよいよ始まろうとしている。 8時半定刻を少し回ったところで、近藤先生が壇上に上る。流暢な英語で挨拶、続いてこの会場の館長さんの挨拶、そして小宮先生の挨拶、、小宮先生の紹介をする近藤先生。He is Japanese Carnivorous Plants Society……と紹介されていた。おいおい、小宮先生はJCPSの会長じゃないよ。。。まあ、いいか。。 喋りは全て英語。。おいおいまさか通訳付かないの?? そうなのだ。この3日間の研究発表は全て英語で通訳はつかないのである。学生時代にもうすこし英語を勉強しておけばよかった。。 今日の研究発表はNepenthes関連のものが多い。Nepenthes of Borneo等の著者で有名なCharls Clarck氏やCh'ien Lee氏の講演は見逃せないであろう。

講演は全て英語で聞いていても全くわからないので、誠に勝手ではあるが、興味のない研究発表のときは離席して2階の即売場で遊んでいた。即売場では売り場担当の橋本さんが、売り子をサボって他のブースでネペンテスやらヘリアンフォラを物色していた。しょうがないおじさんである。チェンリーのブースでは助手のデーモン氏といえきちさんが売り子をしていた。いえきちさんはチェンリーに頼まれて日本語通訳も兼ねて売り子をやっている。売れ行きは好調のようで、いい苗が破格でポンポン売れていく。 ここ即売場と展示場は会費を払わなくても自由に見学、購入できるので、ホームページなどで聞きつけた一般のお客様も多く来場されたようである。

各ブースも黒山の人だかり状態であり、発表会場の熱気とはまた違う熱気が感じられる。 浜田山常連組も午後になるとちらほら来場し始め、即売品を買いあさっていた。この品質でこの価格は、まさに浜田山価格である。最後の1株を取り合いになりじゃんけんにならないか心配な、そんな雰囲気さえ感じられた。 講演会も休憩時間に入ったようで、外人さんたちがどやどやと即売場にやってきた。その中に見覚えのある方が、、、ドイツ人のSiggi Hartmeyer氏である。彼とはもう8年以上前からの長い付き合いで、まだ電子メールなど使っていない時代であった。彼の発売するビデオを注文したのがきっかけで、お付き合いが始まったのである。彼も私と同じビデオマニアで、会議場の講演は全てビデオに収録していた。3日間だと相当な量になるはずである。そんな彼とはもちろん会うのは初めてで、インチキくさい英語で大いに盛り上がったのである。 売り場もごった返している中、研究会の田中さんが登場。少々躊躇いながらご挨拶したが、久しぶりの再会でもあり、話も盛り上がった。 またフランス人のPeter氏とも初対面。彼とはピンギキュラを交換していた仲であり、お互いのコレクションの充実に貢献しあってのである。今回ももちろんピンギキュラの話で盛り上がりました。彼のコレクションは目を見張るものがあり、今後も大切にお付き合いしたい人物の1人である。今回は彼におみやげとして間淵氏らが作成したピンギキュラの本をプレゼントした。

午前中の講演で目を引いたのは、やはりCharls氏のネペンテスであり、非常に興味を引か れたものである。ついで長谷部光泰氏の講演。。。ん?どこかで聞いた名前だな? そう。彼は私と同年で、学生時代に良く研究会に出入していた仲であり、個人的にも食虫植物の交流をしていたのである。その後おたがい別々の道を歩み、今回の国際会議で再会となったわけである。また彼の英語での演説も見事であった。

お昼はどんぶりの店に行き、うなぎ丼に生ビール2杯。増田さん、鵜原さんと乾杯し、午前中の喉の渇きを潤した。 午後にはチェンリーのネペンテススライドショー。こちらは先週の浜田山と同じ内容であるが、素晴らしい内容だけに何回見ても面白い。 またSiggi氏のオーストラリア探検ビデオ上映があり、大いに感動した。彼が発見した新種、D.hartmeyerumの鮮明な映像はすばらしく、他にもD,schizandraやPetiolaris類の自生地は感動物である。英語さえ話せれば、私も次回の国際会議で何かプレゼンテーションをしてみたいと思った次第である。

最後は柴田先生によるコウシンソウの自生地のビデオ上映。通訳の日本人の方が付いてたっぷり話をするかと思いきや、ビデオを見て終わってしまった。しかしそのビデオはハイクオリティーでなかなか良かった。そして通訳を務めていた人は後の懇親会で判明するが、とても有名な方だったのである。

会場をウロウロしていたときに、ふと見覚えのあるおばちゃんが、、あ! 奥山さんである。八丈島の一正園の方である。わざわざ会議のために来日? いや失礼、上京されたのである。高齢にもかかわらずお元気そうで何よりである。 また、いつもドロセラの良い苗を提供して頂いている光田先生にもお会いできた。今回も良く出来たD.farconeriをもってきて頂き、感謝に耐えない。

しかし、凄い1日である。たった1日でこれだけの方々に一度にお会いできるなんて、、、 淡路や東海で「食虫植物サミット」と称して会合を毎年行なってはいるが、この国際会議こそインターナショナルサミットである。 私はチョコチョコ講演会場を抜け出し、即売場でみんなと遊んでいた。いや、即売場に居た時間のほうが多いのかもしれない。いや、それでいいのだ。とにかく初日は国内外のいろんな方々と交友しまくった1日であった。

チャールズ・クラーク
香港科学技術大学、中華人民共和国)
「私の東南アジアにおけるネペンテス属植物に関する生態的研究の12年 ある私的ハイライト」

長谷部光泰
(基礎生物学研究所;総研大)
「rbcLと18SrDNA遺伝子配列情報から推定したモウセンゴケ科内系統」

ジュマート・アダム
(ケバンサアン・マレーシア大学、マレーシア)
「マレーシア、サバ州シピタン、ウエストンにおけるネペンテス属数種の個体群構造」

堀田満
(鹿児島大学;鹿児島県立短期大学)
「マレーシアのウツボカズラ」

チェン・リー
(マレーシアナ・トロピカル、マレーシア)
「マレーシア、サワラク州(ボルネオ島)、ホセ山脈のネペンテス属」

星良和
(有明工業高等専門学校)
「モウセンゴケ科モウセンゴケ属の染色体研究」

ダグラス・W.ダルノウスキ
(ワシントン大学、アメリカ合衆国)
「甲殻類や原生生物と旺盛生育時のムジナモとの関りについて」

シークフリート・ハートメイヤー
(ドイツ)
「オーストラリア産モウセンゴケ属アラチノプス節、ランプロレピス節、プロリフェラ節に含まれる3種の、デジタルビデオカメラを使った観察」

柴田千晶
(日本歯科大学)
「庚申山とコウシンソウの四季」

歓談タイム

日下部先生

柴田先生

一正園の奥村さん

左から、奥村さん、山本さん、田中さん

買い物に専念する橋本氏

売り子のお手伝い

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